後宮で働く猫猫(マオマオ)が、薬師の知識で事件の謎を推理する中華系ミステリー「薬屋のひとりごと」
第11話では、猫猫が、里帰りした花街のとある妓楼で、瀕死の男女が倒れているという事件に遭遇しました。この記事では、「薬屋のひとりごと」第12話のあらすじと感想をお伝えします。
薬屋のひとりごと【第12話】あらすじ「心中しようとした妓女と客、真相は…?」
猫猫が炭を潰しているところに、猫猫の師匠が登場しました。猫猫は、「遅かったな、おやじ」と声をかけます。師匠は、ひと通り患者と部屋の状況を見ると猫猫に、「これは何の毒だと思った?」と問います。師匠に尋ねられることを予測していた猫猫は、心中で使ったのは煙草の毒だと思う、と答えます。胃液が毒の吸収を抑えることもあるから水は飲ませなかったと言う猫猫に、師匠は「もし最初から水で溶かした毒なら薄めた方がいいのかもしれない」と応じます。そこへ、不機嫌そうに禿がやって来て、お茶の準備ができたと猫猫たちを客間に呼びました。
妓楼の店主から診察代をもらい、茶菓子を食べながら猫猫は、男が上等な着物を着ており金にも女にも困りそうにない風貌をしていたことを思い出します。猫猫は、様子を見てくると言い部屋を出ました。
先に男の部屋の前に来た猫猫は、禿が短刀で男を殺そうとしているのを目撃します。「こんな奴死んだ方がいいんだ!」という禿を何とか止めたところに、他の妓女が通りかかりました。妓女は、禿の姉がこの男に身請けの約束を破られ自殺してしまったことや、男があちこちで妓女を口説いては身請けを仄めかし、飽きたら捨てるというのを繰り返していることを話しました。猫猫は泣いている禿を見て、殺人未遂を口外しないことを了承します。
帰ってきた後、猫猫は何かが引っかかると1人で考え事を続けています。幼い禿にまで恨まれる男が、心中するとは思えなかったのです。「まさか心中じゃなくて…」と呟く猫猫に、師匠は「憶測でものを言ってはいけないよ」と注意しました。猫猫は、師匠が真実に気づいていることを確信し、何か見逃したものが無かったか考えます。倒れていた男女の周りには、器が1つと、麦藁と種類の違う2色の酒がありました。何か気づいた様子で水瓶から水をすくう猫猫に、師匠は「もう終わったことだよ」と言いました。猫猫は、「わかってる」と答え家を出ます。
歩きながら、猫猫は事の真相を考えます。これは心中ではなく殺人で、殺そうとしたのは妓女の方。犯行に使ったのは煙草を漬けた酒。警戒心の強い男に毒酒を飲ませるため、妓女は2種類の酒を層ができるようにグラスに注ぎ、普段からストローとして使っている麦藁で毒が入っていない下の層だけを飲みます。男は安心して毒酒である上の層から酒をあおり、倒れます。その後、妓女は煙草の葉を撒き散らして偽装工作をした後、死なない程度の少量の毒を飲みます。周囲に心中と思わせるためです。
妓楼の前にやってきた猫猫は、目を覚ました妓女が窓辺で唄を口ずさんでいるのを見つけます。儚げでしたたかな妓女を見ながら、猫猫は、禿の行動は妓女が死なないとわかっているかのようだったと思い、他にも疑えば怪しいこと、怪しい人が沢山いる、と思いを馳せます。ずっと帰りたかった花街も、本質は後宮と変わりません。花園であり鳥籠で、皆閉じこもった空間の空気に毒されていきます。妓女がどうなるかは分からないが、そんな事をいちいち考えていてはこの街では生きていけない、と猫猫は気持ちを切り替え、「やっぱり緑青館でもらい湯しよう」とあくびをするのでした。
薬屋のひとりごと【第12話】感想「花街の華やかさと、流れている空気感」
第12話では妓楼での事件の真相が分かりました。妓女と客の男での心中かと思っていたので殺人未遂と分かったときはとても驚きました。男は花街で恨みをかっており、何度か毒を盛られたり殺されかけたりして護衛をつけて花街に来ていたようで、その男に毒を盛るためのテクニックもかなり手の込んだものでした。重さや色の使う二種類の酒とストローで、妓女が毒見をしたように見せかけつつ男だけに毒を飲ませる、考え抜かれた方法だったと思います。猫猫も最初は気づかず見落としていたようで、すぐに真相に気づいていた猫猫の師匠はさすがだなと思います。すべて察した上で「憶測でものを言ってはいけないよ」という猫猫の師匠の眼差しは、考えさせられるものがありました。
猫猫は事件の真相に思いを馳せながら、後宮と花街の本質は同じだと考えています。花街の華やかさと、その裏にある人々の気持ちと、淀んだ空気感とで何ともいえない気持ちになりました。閉じ込められた空間の毒された空気を飲み、妓女もまた甘い毒へと変わっていくのだと書かれていて、儚く見えるけれどしたたかな妓女に「甘い毒」という表現が良く合うと思いました。そして、他人がどうなるかいちいち考えていてはこの街では生きていけない、と切り替える猫猫の様子をみて、今までの猫猫のどこか冷めたような行動や冷静さ、割り切りの良さはこうした環境で育つ中で培われたものだと分かりました。猫猫は情にあつい一面ももっているのですが、普段は気持ちを切り替えてコントロールしていくことが、うまく生きていく術なのかもしれません。
事件の解決だけでなく、花街の雰囲気や空気感も分かった第12話でした。第13話では、猫猫は里帰りを終え、物語の舞台はまた後宮に戻ってきます。お楽しみに!
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